沖縄の在日米軍専用施設面積を50%以下にするそうです

沖縄県は国土面積の0.6%に米軍専用施設の70・3%が集中しているということが頻繁に問題として掲げられます。

現在開催されている沖縄県議会2月定例会においても様々な議員からこの話題が取り上げられました。

理由としては知事の所信表明演説の中に「在日米軍専用施設面積の50%以下を目指す」という部分からです。

知事答弁として公室長から

まずは当面50%以下を目指すとする具体的な数値目標を設定し、実現することを日米両政府に求めるものであります。この具体の返還施設につきましては、沖縄県から具体的に提示するのではなく、基地の提供責任者である日本政府と実際に基地を運用する米国政府との間で協議し、数値目標を設定していただくことが実現可能性を高める上で有効だと考えており、県として日米政府に対し、返還基地や返還期間を含めた具体的な返還計画の策定を求めていきたいというふうに考えております。

とありました。正直なところ私の頭では理解できません。

具体的に設定するが、具体的な提示はなく、日米両政府に対して「50%と設定したから、あとはよろしく!」と言う他人任せの自主性を持たない所信に対し県内報道紙でも「具体的な戦略が見えない」との社説(沖縄タイムス2月18日)に以下書かれていました。

しかし、どの基地を、いつまでに、削減するのか。跡地をどのように利用するのか。具体的な戦略は明示されていない。

来年、復帰50年の大きな節目を迎えるにあたり、「対話」に応じない政府を、協議の場に引き出す狙いがある。県が主体的に目標を打ち出したことは評価できる。だが、「50%以下なら許容するのか」と受け止められれば、日米両政府に誤ったメッセージを送る「もろ刃の剣」になる危険性もある。説明不足と分かりにくさは否めない。

日米特別行動委員会(SACO)で合意した11の施設の返還は、ほとんどが県内移設を条件とし、返還が全て実現しても69%が沖縄に残ることになる。

県議会が全会一致で2度決議した海兵隊撤退が実現した場合は、41%に削減される。

県内には海兵隊施設以外にも多くの米軍基地がある。空軍嘉手納基地と嘉手納弾薬庫の面積は計4644ヘクタールに上り、この二つの基地だけで、在日米軍の主要な6基地である三沢、横田、厚木、横須賀、岩国、佐世保を合わせた面積を超える異常な現実を忘れてはならない。

なぜ、海兵隊撤退を明言しないのか。単に50%だけでは、何をしたいのか伝わらない。

確かに、沖縄21世紀ビジョンには基地のない島を目指すことが記載されており、これまでも2度、海兵隊撤退が全会一致で決議されています。私としても基地は全世界にない方が良いと思います。

米軍基地が返されることは望むべきことですが、そこから新たな収入がなければこれまでよりも沖縄の体力が削られるだけとなってしまいます。知事は米軍基地は沖縄県の経済の阻害要因となっていると答弁をされました。

沖縄県内H28年度の基地雇用員の給与が521億円、土地使用料として858億円、さらにはそこから生まれる2416億円の直接的な経済効果があるということがわかりました。観光のケースを当てはめてみると2次的波及効果として4200億円以上です。基地面積が減るということは、その金額も減ってきます。減少する基地に関わる経済効果以上のものを作り出すビジョンがなければ諸手をあげて全県民が喜ぶことにはつながりません。

在日海兵隊ウエブサイトから在沖縄米軍がもたらす経済効果

沖縄県資料 基地と財政

また、使い勝手の悪い土地を先に返されてしまい、収入も途絶えてしまう。それこそが県経済に悪影響を与えます。

辺野古移設反対の主張をしていた稲嶺進前名護市長でさえ、キャンプ・ハンセンの返還延長を要求していました(沖縄タイムス2016年4月3日米軍キャンプ・ハンセン返還延長要求は「基地依存」か?【誤解だらけの沖縄基地・25】)

合意を受け、稲嶺市長は沖縄防衛局に武田博史局長(当時)を訪ね、返還期限の延長を要請。市に限定した返還で、地形的にも跡地利用が難しく、さらに段階的な返還は3区間に差異が生じるため混乱を招く-といった理由からだった。

SACO最終報告(防衛省webサイト)の中では県内移設を伴いながらも5000haの返還がなされます。そこには嘉手納以南、普天間基地やキャンプキンザーや那覇軍港など市街地にある利便性の高い場所も含まれております。

だからこそ、まずはこのSACOで合意された基地の返還を着実に進めながら、その地域と話し合った上で、沖縄県全体のバランスを整えていく開発が必要だと思います。

また、基地には土壌汚染や水源汚染など様々な課題問題もあるとは言われていますが、(朝日新聞DIGITAL社説2020年4月20日)皮肉なことに、広大な基地のおかげで人の開発から自然が護られていることもあるようです。(沖縄島在駐米軍北部訓練場内ヘリパッド移設計画の見直しの要望書1999年10月10日日本鳥学会1999年度大会総会)

経済的な活動と自然、そして県民・国民の安全保障と様々なものが絡み合う沖縄県の基地問題。沖縄県知事の発言や県の取り組みは非常に「重い」のです。議会でも県外・国外に移設するのか?という質問がありましたが、国外であれば在日米軍施設の分母としての面積が減るので、沖縄県の負担「率」への影響は少ないという趣旨でした。数字を挙げただけのパフォーマンスにならないように、理想を語るのも良いが、根拠や筋道をしっかり立てて欲しいと議場でも多くの議員が話しております。知事は真摯にそれを受けて今後の施策に臨んで欲しいと感じています。