沖縄県議会令和6年第一回(2月)定例会一般質問内容

2月14日から沖縄県議会13期最後の定例議会が開催されています。

2月28日10時過ぎから会派沖縄自民党の2日目トップバッターで登壇いたします。内容は以下になります。

1.行財政改革について
(1)玉城知事就任後、知事自身と副知事など特別職による海外視察の回数、および同行職員を含む視察に伴う経費(特別旅費)の推移について、また県内離島視察の回数と経費の推移について伺う

玉城知事は地域外交という名のもとに海外視察に頻繁に行っていますが、離島への視察は少ないと言われています。議会でもよく離島の振興なくして沖縄の発展なしと言われますが、行動がその人のすべてですので、どのような状況となっているかを伺います。

(2)ハード交付金推移と県の工事についての影響の現状を伺う

沖縄県には沖縄の発展に資する事業に活用できる一括交付金という制度があります。ソフトとハードに分かれていますが、様々な事業に利用できるソフト交付金と基本的な施設や道路などの整備に使うハード交付金があります。しかし、2014年の1759億円をピークに2024年度は763億円(前年度より4億円増)とおよそ1000億円も縮小しています。うち、ハード交付金は932億円から368億円と半分以下となっており、事業が進まない状況です。しかし、他の県では県の単独の財源や起債して必要な施設・道路整備はどは行なっておりますので、減額も影響はしていますが、それだけとは言えないものだと思います。県独自の財源を使ってどの程度の工事がなされているのか?ということも確認します。

(3)今回の沖縄県庁部局組織改編において地域外交課設置の意図について伺う

沖縄県の部局組織改編において地域外交課が設置されます。その他にも世界ウチナーンチュセンターを作るなど積極的に外向けの事業を行なっていますが、今年度に入り、過去最悪の200件以上の事務ミスが計上されていますので、マンパワーの不足は明らかです。だからこそ、今は外交ではなく内政を整えるべきであると主張します。

2.首里城について
(1)首里城周辺のオーバーツーリズム対策について

観光庁のオーバーツーリズム対策で事業を予定しているようですが、正殿の火災前のようになるのでは?と、まだまだ心配の声が聞こえますので、その確認をしていきます。

(2)首里城の令和8年度の正殿完成に合わせて、施設整備以外に県として事業予定があるか伺う

施設整備に関しては今後も松崎馬場、中城御殿や円覚寺山門など予定されていますが、正殿完成に合わせて綾門大道(あやじょううふみち)での綾門大綱(県のサイト2007年から) (すいまち研のサイトから)をしてはどうか?と提案いたします。今から企画をしないと令和8年には間に合いません。

合わせて、明日22日に発表された令和5 年度の沖縄振興特定事業推進費において、「国宝琉球国王尚家関係資料等展示・収蔵施設整備事業」が交付決定されました。国からの予算確保によって、整備事業の財源確保は見通しがつきましたが、施設整備が完了後の管理費等については、県と那覇市の調整はこれからです。

また、沖縄県は那覇市に対して、建設負担金5億円を要求しているとのことですが、県は中城御殿跡地事業において、「国宝琉球国王尚家関係資料等展示・収蔵施設整備事業」を那覇市にお願いしている立場であり、さらには、那覇市は施設全体の管理を依頼する立場です。しかし、建設負担金を設けてしまうと、那覇市がそれに難色を示し、事業から撤退する可能性があるのでは?と言われています。するとこの先の事業の見通しがつかなくなります。

せっかく推進費によって交付決定まで出た状態であるにもかかわらず、県が、
「那覇市がメリットを得る事業だから、那覇市にも当然負担を求めるべきだ」
と言う財政的見地から建設に那覇市に負担を求めると、この事業はうまくいかないということも申し述べたいと考えています。

(3)首里城火災時に被害のあった周辺住民、事業者に対して補償がどのようになされたか伺う

この案件は私が県議会に4年前に当選して、初めて取り上げた案件の一つです。4年間で何が変わったか?またその時にも知事に伝えましたが「誰も取り残さない」という言葉は本気か?ということを問いたいと思います。

(4)かつて首里城内にあった沖縄神社について県の認識と現状について伺う

首里城は廃藩置県後に解体される予定でした。しかし、鎌倉芳太郎氏と伊東忠太氏のおかげを持って難を逃れ、その後に国宝指定がなされました。その予算を確保できたのは沖縄神社(沖縄県神社庁サイト)の建立も一役買っていますので、その歴史もしっかりと伝えるべきでは無いか?歴史は一部を切り取るではなく連綿と続いていることを示すべきであると考えますので、その見解を聞きます。

3.災害復旧の計画について
(1)元日の能登地震による被害とその後の復旧状況を見ると、半島であるということで生活インフラの再建が難しい。沖縄県においても他県と離れている島嶼県であることから、同様の可能性が高いと考えられるがその対応について県の考えを伺う
(2)透析などの医療を必要としている住民や高齢者や障害者などの避難対応についてどのような計画が立てられているか伺う

(1)(2)を合わせて、ごちゃまぜ福祉、地域共生社会を築くということを提案します。個性の大切さ、異質なものの相互作用、ごちゃまぜです。
多様な異質のものが集まって、それらが相互作用を引き起こす。認知症の人も、障がいのある人もない人も、高齢者も子どもも若者もニートも引きこもりの人も、あらゆる人達をごちゃまぜにして、自然に楽しくその力を引き出し、元気と活気のある地域、あらゆる人に開かれた地域をつくっていこうということなのです。そこで重要なことは、孤立を防ぐということ。施設だけでない、地域を作ることを、すぐにでも行うべきであり、この地域ができると実に災害時の対応もすんなり行くという実例があります。

また、離島であるが故に普段から医療体制が脆弱であること、有事には医療の不足が想定されること、今回の能登地震の際にも活用できるであろう病院船の造船と沖縄での母港の設置を提案します。

4.沖縄県内の渇水状況について伺う
2月11日に中部の井戸や川からの取水を再開したようだが、これまで取水を制限していた理由と、今回の再開に関しての理由を伺う

これまでなぜ取水を制限していたのか?今回の渇水で再開できるのであれば、処理を行えば問題なかったのでは無いか?政治的な案件として使っていたのではないか?という問いかけをします。

5.我が党の代表質問に関連して伺う
知事が考える最低限の抑止力、防衛力とはどのようなものか具体的に伺う

玉城知事は二重基準であると八重山日報(2月22日)にも報じられたように、抑止力を強化することで攻撃目標となる恐れがあるとの知事の持論を議会て展開しています。

では、どの程度の抑止力が必要と考えているのか?具体的な数字を持って答えていただきたいと考えています。

また、尖閣については我が県土でありますが、煮え切らない答弁しかなされない状況です。

溜政仁知事公室長は「尖閣を巡っては日本と中国の政府間で見解の相違があるため、日中両国の政府で協議が行われている。国の主権に関わる問題は、一義的には政府で対応する」と、尖閣問題が「国の問題」である理由を説明。玉城知事も「政府にさまざまな問題の解決が図られるよう強くお願いしている」と強調した。

としますが、先日の「おきなわ新風」の代表質問において、中国が知事の訪台湾に対して反発したことについては理解してもらえるよう丁寧に説明する旨の答弁が出ていました。それも国の主権に関わる内政干渉であると私は考えますので、そのことに関わる問題についてなぜ中国に説明をする必要があるのか?を問うてみようと考えています。

ということで、私が考える質問の論点を記載しましたが、結構、私のSNSを見てる職員がいるようですので、知事がはぐらかすことない答弁のご対応いただければありがたいと思います。

沖縄産コーヒーいかがでしょうか?

朝食のコーヒーで目を醒させたり、コーヒーブレイクで気持ちをほぐしたりする機会など、私たちの周りにはコーヒーを飲むシーンはいくつかあります。

私もコーヒーを淹れる時の時間が大好きで、良く家でコーヒを自分で淹れて香りや味を楽しみます。

2022(令和4)年の日本では約43万2千トンの消費がなされています。全日本コーヒー協会がおこなった「コーヒーの需要動向に関する基本調査」によると、2020(令和2)年の日本人1人1週間当たりの杯数は、11.53杯ということです。
内訳はインスタント4.00杯、レギュラー4.11杯、リキッド1.97杯、缶1.15杯となっています。意外と飲んでいると感じるのではないでしょうか。
2020(令和2)年の世界の1人当たりのコーヒー消費量は以下のとおりです。

(Kg/1人/1年)日本3.4・ルクセンブルグ17.68・フィンランド12.14・スウェーデン10.42・ノルウェー9.00・スイス8.54・ブラジル6.29・USA4.85 

となっており、ヨーロッパでの消費が非常に多いと感じます。

世界中で多くの人に親しまれていますが、この先、コーヒーの2050年問題(写真はキーコーヒーの2050年問題サイトより)ということで、地球温暖化により環境の変化を受けてコーヒー栽培にも影響が出るのではないかと言われています。

 

皆様もご存知のようにコーヒー栽培が盛んに行われている南米でもシミュレーションを行った際には面積が半減する恐れがあるようです。色のついたところで栽培されていますが、その地域が少なくなっていることがわかります。

南米の例にもあるようにコーヒーの栽培は、温暖で適度な雨量のある場所が適しています。赤道をはさみ南北緯25度、北回帰線と南回帰線の間の「コーヒーベルト」と呼ばれる地域において、ほとんどが生産されています。

日本の最南端である沖縄県はおよそ北緯24度から28度(本島は約北緯26度)で、栽培は可能ですが、台風ななどで風が強く日差しも強いため大規模栽培は難しく、これまでは限定された量にとどまっていたようです。

しかし、現在、沖縄の中でコーヒー栽培についての機運が高まっています。

世界規模の職員メーカーであるネスレが元サッカー日本代表選手の高原氏が率いる沖縄SVの農業部門の企業と連携して2019年に沖縄コーヒープロジェクトが開始されています。名護をスタートして始まり、山間地で風や日差しが程よく適している地として大宜味村での栽培もなされるようになっています。さらにはうるま市との協力もなされ耕作放棄地の活用なども行われています。

また、全国放送のニュースでも県内のコーヒー園が特集放送され、年末年始の長期取材を受けている別の園もあるようです。物産展では1杯あたり二千円のコーヒーも販売されていました。コーヒー販売で1億円プレイヤーも誕生しているとも聞いています。

先ほど発表されたOKINAWA Startup  Program2023-24でも琉球コーヒーエナジー社の太陽光発電を利用した耐候型農業ハウスでのコーヒー栽培普及モデル事業が採択されるなど、沖縄産コーヒーの可能性は高まっていると言えるのではないでしょうか。【研究シーズ×おきなわスタートアップエコシステム MEET UP vol.1-琉球大学編-】実施レポート

合わせてコーヒーの実(コーヒチェリー)の活用もできるのではないかと言われています。今は堆肥として使われているのがほとんどのようですが、糖度も高く、15~17度(マスカット と同じくらい)もあると言われていますのでジャムにもできます。若干実は少なめですが、県内外でも商品化しているところもあります。私も元職が洋菓子職人ですので材料としてお菓子にもなるのではないかと想像してしまいます。焙煎して淹れたコーヒーも使い、他の県産食材と合わせてみたら面白いと思います。また、飲料としてのコーヒーはタネの部分を使いますので、捨てる部分も減ってきますので実の活用はフードロスにもつながります。コーヒーは今後の沖縄県において非常に期待できる農作物ではないでしょうか。

新年のご挨拶、本年は選挙イヤーです

【新年のご挨拶】

今年は元旦の能登半島における地震から幕を開けました。被害に遭われた方々に 対し心よりお見舞いを申し上げると共に、お亡くなりになりました方へ哀悼の誠を 捧げます。

今まさに政府被害対策本部を立ち上げ、全力で救助・支援活動を行っていますが、今後はさらに地域にお住まいの方々、地域自治体をはじめとする、警察、消防、自衛隊などの行政機関、医療や現地での建物や道路などの撤去、補修など、復旧復興に関わる民間事業者に対し協力支援が必要となって参ります。

また、大きな揺れが続き、住まいを失った住民や地域を離れ避難したいと考える方もいるかと思います。我々も議会を通し、県や国に対し沖縄県での避難民の受け入れなども提案いたします。迅速な復旧・復興、安全・安心のため沖縄県からも現地と協力して最大限の支援をお届けしたいと思います。 最後に、本年が皆様にとって健康で素晴らしい年となりますようご祈念いたします。また、沖縄県が発展する年となりますよう私も励んで参りますので本年も皆様 からのご助言とお力添えを賜りますようお願いいたします。

【本年は選挙イヤーです!】

本年、令和6年(2024年)は世界各地でリーダーや議会の構成を決める選挙が予定されており、世界情勢に大きな影響を与える国や地域で選挙が相次ぐ、世界的な「選挙イヤー」!以下、列挙すると非常に重要である国や地域ばかりです。

1月 13日 台湾総統選、中国とどのように対するかが大きな争点となります。米国・日本などと関係強化で中国を抑止したい与党・民進党の頼清徳氏、中国との交流を密にしたい最大野党・国民党の侯友宜氏、野党第2党・民衆党の柯文哲氏の三つ巴となっています。今のところ与党が強いとなっていますが、沖縄との関係も深い国ですので気になるところです。

2月 インドネシア大統領選挙、世界最大の直接選挙とも言われます。国民の関心は高く、有権者数は2億人を超え、前回の大統領選の投票率は約8割に達したとのことです(すごい!)成長著しいインドネシアのリーダーの舵取りは日本経済にも大きく影響します。

3月 ロシア大統領選、有力な対立候補がおらず、プーチン大統領の再選が確実視されていて、当選すれば新たな任期は2030年。ウクライナ侵攻がこのまま続くものになると思われます。

4月 韓国総選挙、ユン・ソンニョル大統領側の少数与党が敗北ならば、ユン大統領は残る3年の任期運営が厳しくなります。また、現在、改善傾向にある日韓関係にどう影響するのかが気になるところです。

4月から5月 インド総選挙、有権者が9億人(人口14億人)を超える世界最大規模の選挙です。3期目を目指すモディ首相の率いる与党が勝つのかどうか。世界最大の人口のインドがどのような方向で世界と渡り合うのかに繋がります。

6月 EU「ヨーロッパ議会」選挙、EU加盟国から選出された議員で作るヨーロッパ議会の選挙が行われます。この選挙は加盟国各国の「支援疲れ」も言われる中で今後のロシアのウクライナ侵攻の対策に大きな影響を与える選挙となります。

11月 アメリカ大統領選挙、世界中の注目を受け、すでに選挙に向けて動きがスタートしていますが、現職の民主党のバイデン大統領と野党・共和党のトランプ前大統領が争うことになりそうです。が、バイデン氏はアメリカ史上最高齢大統領の81歳。年齢や健康状態が有権者が気にかけているようです。トランプ氏は前回大統領選挙の結果を覆そうとしたなどとして起訴されています。コロラドやメイン州政府最高裁での前大統領の出馬資格を否定されていますので、その上告の裁判など選挙戦が同時に進む状況となっています。沖縄の基地課題ともリンクする重要な選挙となります。

このように世界でも多くの選挙が行われますが、沖縄県でも私の所属する沖縄県議会議員選挙が6月に予定されています。沖縄県の振興・発展に大きく関わる選挙です。是非ともご興味ご関心を持って、関わっていただければ幸いです。

海外への「バラマキ」は必要なの?

今日はODA(政府開発援助)について書いてみます。

ODAとは何か:「開発途上国の社会・経済の開発を支援するため、政府をはじめ、国際機関、NGO、民間企業などさまざまな組織や団体が経済協力を行っています。これらの経済協力のうち、政府が開発途上国に行う資金や技術の協力を政府開発援助(Official Development Assistance:ODA)といいます」(JICA(ジャイカ)のODA見える化サイトから)

よく、海外へ何千億円、何兆円の投資を政府が約束したという報道がなされますが、その時に「無駄遣いだ!」「国内の人にお金を使うべきだ!」と言われます。

果たして本当に無駄遣いなのでしょうか?それは余りにも近視眼的な見方ではないかと思います。

何故ならODAは日本が外交力を発揮する上で最も有用な手段であると言われています。仮にODAの金額を削れば、日本の国際社会での立場は今より厳しくなるはずです。

カンボジアへの支援を例として挙げてみます。上のグラフは日中のカンボジアへの支出額ベースの援助実施額(100万USD)です。すでに日本より中国が大きいものになっています。(JETRO地域分析レポート・日本と中国の援助から見るカンボジアより)2010年からは中国の方がはるかに上回っています。

しかし、中国の対外援助戦略は三位一体モデルとも呼ばれ、援助が投資や貿易と密接に結びついている。中国援助はタイド、つまり自国の財やサービスの購入と援助が結びついている事例がほとんどで、中国の援助で建設されるインフラ設備は中国企業または中国企業と現地企業の合弁会社が請け負い、労働者も含め資機材、設備、技術、サービスなどの50%以上が中国から調達されている

(中略)

増加する中国援助に反比例して、欧米ドナーの存在感は薄まりつつある。カンボジア政府の「開発協力とパートナーシップ報告書」によると、2007年から2014年のドナー地域別の援助額比率で、中国は11.9%から23.8%と大きく拡大する一方で、欧米ドナーは27.2%から20.9%と縮小している。

これに呼応する様に、カンボジアの欧米に対する外交戦略は強気な姿勢が目立つようになった(JETRO地域分析レポートから)

ただでさえ、このような状況にありますので、これがさらに縮小した際にはカンボジアの政府は中国寄りになってしまうことはあきらかであると思いますので、それを防ぐためにもODAなどによる海外への開発支援予算というのは大切なものではないでしょうか。

中国の海外支援の状況と同様に、日本のODAの多くはその国のインフラ開発に使われ(近年は円借款事業の約65%を建設・電気・運輸会社や商社など日本企業が受注しているようです。これは、例年、総額4000億円程度の円借款に、日本の技術を活用するという条件(STEP)を付していることが影響)、日系企業が受注しています。これらは日系企業の売上にも繋がり、単に海外にお金をばらまいているわけではありません。日本政府が資金援助し、日系企業にお金が回り、現地のインフラが整うという図式になっています。近年ではフィリピンの首都圏地下鉄整備があげられます。

その、日本の技術力を発揮できるインフラ整備、教育・保険などの社会的なものも含め、ハード面だけでなく、その活用という点での人材育成も取り組みがなされています。作って終わり、ではなくその後のこと国・地域の自立ということを考えた時には重要ではないかと思います。ボリュームもありますが、開発協力白書2022日本の国際協力に詳しく書かれておりますのでご覧いただきたいと思います。

よく海外支援は「バラマキ」と言われますが、多くは円借款(日経ビジネス:注目の「円借款」を1分で説明できますか)です。これは端的に説明すれば低金利で貸し付けるお金のことです。投資して返ってくるものであり、あげるものではありません。

日本が円借款を伝統的に重視してきたことについて、外務省は「援助を一方的に与えるのでなく、途上国が融資資金をインフラ(社会基盤)整備などに使って、自身の事業として取り組む意識を高めることが重要だからだ」とその意義を説明する。

 途上国の「自助努力」を支援するという考え方は、日本のODAにとって一つの理念でもある。日本自身が第2次大戦後の復興で、世界銀行などの融資を受けてインフラを整備し、それを基に高い経済成長を遂げてきたという“成功体験”にも基づいている。(参考:読売新聞2023.06.20ODA外交の舞台裏を見る)

ちなみに、中国にもODAとして、無償でお金を提供する「無償資金協力」約1600億円、「円借款」約3兆3千億円、「技術支援」約1900億円で、計3兆6千億円余りを支援してきましたが、中国が急速に経済発展を遂げ、他の途上国に戦略的な支援を行うようになった事から。2022年3月末で40年にわたるODAを終了しました。ODAの協力はあまり、中国の国民には知られていないようですが・・・

なお、その円借款はその返済金も原資として再貸付をしていることもありますので、少し古い記事ですが、日経新聞2014.1.19:円借款、返済金が主財源 アジアから8割超 供与先、中東・アフリカへをご紹介しておきます。

なので、出資先が発展していかなければ取りっぱぐれる可能性もありますので、自助努力を促し自立に向けての人材や技術力の育成などの支援も必要なのです。

外務省のサイト日本全国 各地発!中小企業のODA、日本各地の中小企業がODAにどのように参加しているかを取り上げたページから沖縄県の企業の部分です。各都道府県のサイトがありますので、ぜひ参考までに見ていただければと思います。

日本はエネルギー自給率11%、食料自給率38%と海外に頼らざるを得ない状況で、加えて今後の人口減少に伴う人材不足ということも考えた際には勢いのあるアジアを含め世界中に頼るべきところもでてまいります。そのためにもODA含めた海外支援というものは必要であると思われます。

とはいえ、国内でも厳しい生活をする声が聞こえる中で、この案件に対しては丁寧な説明をする必要があり、加えて国民に対しての支援もしっかりと行うことも求められますので、私も皆様にお伝えすると同時に生活面の向上を県連や所属国会議員を通して自民党本部や政府に対して意見してまいりますので、今後もご支援とご意見をお願いします。

スポーツを核にしたまちづくり

 令和5年4月末(今ごろ上げるんか 汗)に県議会の会派での視察として北海道は北広島市にあるエスコンフィールドへ行ってきました。非常に素晴らしい球場でした。

日本ハムファイターズの本拠地は、これまでの札幌ドームから今年になってこの球場になりました。今年は多くのニュースで取り上げられていたので、ご存知の方も多いかと思います。 私の周りでも経済界の方々や、地方議員、行政の職員も視察へと行っています。

夜はゲームを観戦しましたが、きつねダンスなどネット上でも盛り上がっていますが、現地で応援している皆さんも非常に盛り上がっていまして、面白い場ができています。

観戦に先立って、運営会社の方に球場を一通り案内いただき、ご説明いただきま  した。中には年間3000~4000万円の部屋があり、そこも道内の企業が福利厚生や接待での利用ですでに埋まっているそうで、同じく年間180万円の特別シートも完売というお話を伺いました。

さらに周辺には北海道ボールパークFビレッジということで、農機具のクボタの「KUBOTA AGRI FRONT」という“食と農業”の魅力・可能性を、楽しくおいしく学ぶ農業学習施設、“食と農業”の未来を志向する仲間づくりの場をコンセプトとした施設がオープンし、グランピング施設や、ショッピングモール、球場内を中心にフランチャイズの店舗や非常に美味しいと言われる有名な飲食店も様々に非常に多く設置されており、試合の時でなくとも楽しめるようになっていました。さらに周辺にあるマンションの1億円を超える部屋も完売という話もありました。

子育て環境も整ってきており、認定こども園も周囲に整備されていました。球場を中心にしたまちづくりがなされてきています。ここまで一気に整備がなされるとにさすが広い土地を持つ北海道ならではのまちづくりだと感じさせられます。

沖縄県でも沖縄市の沖縄アリーナが全国的に注目されてきています。これまでは宿泊施設がなく、試合を見たら北谷や那覇の宿に帰る方がほとんどで、交通渋滞も課題となっていました。しかし、今後は呉屋十字路やパークアベニューの付近にバスターミナルができ、そこから放射線状にバスが出入りするようになります。ホテルも現在建設されていますので、今後は試合が終わってから飲食店などに人が流れていくことも考えられます。今年のFIBAワールドカップの開催もありましたので、これまで以上にアリーナを中心として活発化していくのではないでしょうか。

那覇市でも奥武山公園周辺の整備などが今後計画されていくかと思いますので、 スポーツ施設を中心としたまちづくりというものは非常に面白いと考えられます。しかし前述の沖縄市の事例もありますので、しっかりとした交通導線を考えておかねば渋滞がただでさえ酷い那覇ですから、より深刻な問題となってしまい、不評を買ってしまうことで逆効果になる恐れがあります。たんに人を集めるだけが活性化ではありませんので、全国、全世界のまちづくりを視察・勉強し、その 事例を参考に提案をしていきたいと思います。

特別措置法(復帰特別措置法・沖縄振興特別措置法)

沖縄県には2つの特別措置法があります。

沖縄県の復帰に伴う特別措置に関する法律(いわゆる復帰特措法)と、沖縄振興特別措置法(振興特措法)です。

5月15日、1972年に沖縄県が敗戦後27年間の米国施政下を経て日本に復帰を果 たした際に法律や制度などが大きく変わると生活支障が出るということで激変緩和措置を趣旨として復帰特措法が制定されました。

第一条 この法律は、沖縄の復帰に伴い、本邦の諸制度の沖縄県の区域における円滑な実施を図るために必要な特別措置を定めるものとする。

とあります。非常に幅広く、我々の生活において関わる多くの事案がこの法律には記載されています。

それから52年目を迎えます。沖縄県は道路、港湾、水道、住宅、医療などの生活インフラの整備の本土との格差や大型の製造業が育たなかったことも含め、戦後の日本の復興期とは流れの異なる時間を過ごしています。

その後、第1~3次の沖縄開発振興計画は本土との格差是正を主として、第4~5次の沖縄振興計画は民間主導の自立型経済の構築を目標として社会資本整備がなされ、現在は第6次です。これが最後の振興計画であるとも言われています。その根拠法となるのが沖縄振興特別措置法です。

第4次までは沖縄開発庁や内閣府などの中央省庁を中心に計画が立てらてていましたが、第5次以降は沖縄県の自主性を重んじて国と協議しながら県が計画を作り定めていく方針となっています。その基礎となるものは仲井眞県政時代に定められた21世紀ビジョンと根拠法として、本土で施行されている地域振興立法を参考にし、制定されています。

1〜6次の流れは国立公文書館1〜6次の流れは国立公文書館(〔コラム〕公文書等から見る沖縄振興(開発)計画~国立公文書館所蔵資料を中心に~)をご覧になるとわかりやすいです。

復帰特措法による税制には以前にこのブログでも触れた酒税減税、他にガソリンにかかる揮発油税の軽減などがあります。(※現在(R5.12.03)において揮発油税の軽減措置1Lあたり7円をどのようにするのか?ということが国会でも議論となっています。)

また、現在の沖縄振興特措法には沖縄公庫の設置や沖縄振興交付金(いわゆる一括交付金)、自由貿易地域や金融などの産業を活性化させるための特別区の制定、インフ ラの県民負担軽減を目的とした電気の供給に関わる課税や中小企業の振興など含めた減税措置があります。

この2つの特措法に加えて沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法(駐留軍用地の跡地利用法)もあります(跡地利用法についてはまたの機会で)

このように沖縄県復帰から様々な振興策を50年余取り組んでまいりましたが、なかなか平均所得が最下位から脱却することができません。今後の県の発展を考えた際には、もちろん観光業など現在の基幹産業と言える業界をしっかりと支援して強化しベースとすることは必要です。

加えて私もこれまで何度も議会で取り上げていますが、海洋資源の研究開発を国と力を合わせ、方針をつくり、OISTなどの研究機関との連携で充実させて、県内の産業として育成することは非常に重要だと思います。他にもOISTとの連携という点では、薬剤師会から強く要望の上がっている県内への大学薬学部設置から創薬にもつながるものになるのではないかという期待もあります。また、県内の経済循環率を高め、食糧自給率を上げていくことも必要となってきます。稼げる漁業や稼げる農業も重要です。このように産業の創出や教育機関を設置し、教育力を上げることなど、沖縄県にはやるべきことが山ほどあるのが現状です。

加えて、沖縄県内の米軍専用施設についても整理統合は進んできていますが、まだまだ負担は非常に大きいといえますので、今後も基地負担の低減についてはしっかりと国とも協議して進めて行かねばならないと思います。国政与党の自民党に所属する県議会議員だからこそできることもあります。

そのためには皆様からの声とお力が必要ですので、今後もご意見、お力添えをお願いいたします。

沖縄県の復帰50周年特設サイトから

北方領土を知っていますか?領土問題について

原稿を書き溜めて入るもののなかなかBlogへの投稿できておらず5ヶ月ぶりの投稿となりました(汗)

沖縄県では領土領海の話をするとよく話題に挙がるのが「尖閣諸島」についてです。尖閣諸島が領土編入された翌1896年(明治29年)にはアホウドリの羽毛採取事業と開拓がなされ、その後には鰹節工場もあったようです。現在はしばしば中国の海警局の船が排他的経済水域や領海を侵犯してくると報道がなされています。詳しくは内閣府の尖閣諸島研究・解説サイトをご覧になってみてください。

一方、沖縄県内では報道などではあまり触れられることのない「北方領土」(外務省北方領土問題とは?)ですが、北海道での視察の際に、行くところどころで目にしました。北方4島とは北から択捉島・国後島・色丹島・歯舞群島のことです。ちなみに日本で1番大きな島は択捉島、次が国後島、そして沖縄本島、佐渡島と続きます。歯舞群島を行政区として所管する根室市では納沙布岬から貝殻島までの距離は3.7Kmと非常に近い場所にあります。ちなみに泊港から慶良間の渡嘉敷島まではおよそ30Kmです。

4島合計で3,124世帯、合計17,291人の方々が1945年に日ソ中立条約を破り、ポツダム宣言受諾後、日本が敗戦を明確にした後に侵略を続けてきたソ連により強制的に退去させられたとなっています。

日本は1951年のサンフランシスコ平和条約でも千島列島と樺太南部は放棄しましたが、放棄した中に北方4島は含まれていません。現在も北方4島ではロシアによる不法占拠が続いている状況です。この領土問題が存在するため、戦後70年以上経った今なお、日本とロシアの間では平和条約が締結されないままとなっています。

なお、ポツダム宣言(内閣府ポツダム宣言)はその前のカイロ宣言(内閣府カイロ宣言)の領土不拡大の原則を引き継いでいるため、国際法上不法占拠であるということで、日本は返還するように求めています。この流れは内閣官房 領土問題の発生をご覧ください。島民1世は すでに平均年齢が80代ということで急がれるものです。

北方4島の周辺は漁獲が豊富な漁場となっているために、毎年ロシアとの漁業交渉がなされています。ちょうど私が北海道に入った直前の4月21日には貝殻島の周辺での昆布漁が妥結し、翌日には大きく報道されていました(貝殻島周辺における2023年の昆布採取に関する民間交渉の結果 について 根室市)が、この報道内容も沖縄県ではなかなか知らされることはありません。

 しかし、我が国固有の領土である北方4島の周辺での漁業をするために、なぜロシアとの交渉が必要なのか?第1管区海上保安本部でお話を伺いましたが、それはロシアが不法な実行支配を続けているため、漁民が周辺での漁をした際には拿捕して船員を逮捕する、船を没収する、などの恐れがあり、致し方ない状況であるようです。

北方4島で2020年では18,000人が住むと言われています(北方領土の位置・面積・人口 北方領土問題対策協会)その中で135万人が住む沖縄本島と同じくらいの大きさの国後島には8,600人程度のロシア人が住んでいると記述されていました。一非常に広大な土地ですので、返ってくることで領土、領海、排他的経済水域と非常に日本の漁業や農業に関して大きな効果がるといえるのではないでしょうか。

日本には他に島根県の竹島(外務省 日本の領土をめぐる情勢)において韓国との領土問題があると言われています。ちなみに沖縄県の尖閣諸島(外務省 日本領土をめぐる情勢)は日本固有の領土であるということで領土問題は「ない」ということになっています。

北朝鮮の拉致問題のシンボルマークとして市民権を得ているブルーリボンと同じ形の色違いのバッジです。色は北方四島の「土地」の色であるベージュがかったブラウン(土色)です。リボンバッジ(アウェアネスリボン ウィキペディアより)には様々な色がありますので、この土色の意味合いも覚えていただければ幸いです。

自由で開かれたインド太平洋 FOIP(Free and Open Indo-Pacific)

月に一度、お昼時間を活用して、支援いただいている方々と一緒に勉強会を開催しています。私が政策として掲げていることや、その時々のトピックスを中心として講師をお招きしていますが、会員からの講話をしていただくこともあります。これまで気が付かなかった新しい話題との出会いや、新たな視点と学びを得る非常に充実した時間です。

その勉強会に外務省沖縄事務所から講師をお招きし「自由で開かれたインド太平洋」について沖縄の地政学的なことも踏まえてお話いただきました。

FOIP(Free and Open Indo-Pacific)外務省サイト経済産業省サイト

この外交戦略は当時の第二次安倍内閣から日本発で概念・理念が広がり、アジア諸国、アメリカ、オーストラリアなど当該地域だけでなく、ヨーロッパの国々からも賛同を得るようになりました。

防衛省サイトより

上の図でインド洋・太平洋を合わせるとアフリカからアジアを経て日本、そして北米・南米と非常に大きなエリアとなっていますが、まさに沖縄は要石のポジションです。

「2016年8月にケニアで開いたアフリカ開発会議(TICAD)で安倍晋三首相が打ち出した外交戦略。成長著しいアジアと潜在力の高いアフリカを重要地域と位置づけ、2つをインド洋と太平洋でつないだ地域全体の経済成長をめざす。自由貿易やインフラ投資を推進し、経済圏の拡大を進める。安全保障面での協力も狙いの一つ。法の支配に基づく海洋の自由を訴え、南シナ海で軍事拠点化を進める中国をけん制する。」と、2017年10月26日の日本経済新聞の解説には記載されていたようです(検索で見つからず)。(笹川平和財団:外務省HPから読み解く「自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP)」の理念と実践 参照)

沖縄県においても台湾有事という言葉も普段から耳にするようになってきていります。また、琉球国時代においても東はタイ国付近まで貿易行っていたこともあり、その先のアフリカあたりの文化や財も経由して入ってきていたことを考えると、地域安定を考え、このFOIPの流れを上手く活用する必要があるのではないでしょうか。

自由で開かれたインド太平洋の実現のための三本柱として以下が外務省のサイトには明記されています。

1 法の支配,航行の自由,自由貿易等の普及・定着

2 経済的繁栄の追求(連結性,EPA/FTAや投資協定を含む経済連携の強化)

3 平和と安定の確保(海上法執行能力の構築,人道支援・災害救援等)

決して争うものでなく、国際法を守り、平和で自由、そして平等な移動や商売を協力して行うようにするべきものであると言うことです。

私が議会でも幾度も取り上げている「海洋資源」についても、まだ国際法が定まっていない部分も多くあります。なので利権を争うのではなく、その法を定めると同時に、前述のように東アジアでは軍事的な緊張がある中で、中国や韓国、北朝鮮などとの連携をしていくことが平和の近道であると考えられますが、そのベースとして理念、考えを共有することができれば良いのではないかと思います。

安倍氏銃撃1年 岸田外交、FOIPを継承・発展へ(産経新聞2023/7/2)

本日(7月2日付け)の産経新聞にもFOIPを基礎として米国に頼るだけでない日本が主体的に地域の安保に貢献し、新たなパワーバランスを創出するための岸田政権の韓国・北朝鮮・インド・オーストラリア・台湾に対する外交政策についての掲載がなされていました。

沖縄県では中国の南シナ海の軍事拠点化を牽制するという部分に沖縄県に対しての抑止力としての自衛隊配備などを連想させるためか、なかなか取り上げられることの少ない事案です。「抑止力」と「外交」という2本の柱でしっかりと周辺国との関係性を良くすることが地域の平和と安全につながるものであります。

皆様もこのFOIPの行き先について興味を持っていただければと思います。

北の国から その2(知床世界遺産)

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」は、2021年7月に世界自然遺産になりました。

推薦地は、中琉球の奄美大島、徳之島、沖縄島北部と、南琉球の西表島の4地域の5構成要素で構成され、面積42,698haの陸域である。中琉球及び南琉球は日本列島の南端部に位置する琉球列島の一部の島々であり、推薦地は黒潮と亜熱帯性高気圧の影響を受け、温暖・多湿な亜熱帯性気候を呈し、主に常緑広葉樹多雨林に覆われている。

推薦地は、世界の生物多様性ホットスポットの一つである日本の中でも生物多様性が突出して高い地域である中琉球・南琉球を最も代表する区域である。推薦地には多くの分類群において多くの種が生息する。また、絶滅危惧種や中琉球・南琉球の固有種が多く、それらの種の割合も高い。さらに、さまざまな固有種の進化の例が見られ、特に、遺存固有種及び/または独特な進化を遂げた種の例が多く存在する。

これらの推薦地の生物多様性の特徴はすべて相互に関連しており、中琉球及び南琉球が大陸島として形成された地史の結果として生じてきた。分断と孤立の長い歴史を反映し、陸域生物はさまざまな進化の過程を経て、海峡を容易に越えられない非飛翔性の陸生脊椎動物群や植物で固有種の事例が多くみられるような、独特の生物相となった。また、中琉球と南琉球では種分化や固有化のパターンが異なっている。

このように推薦地は、多くの固有種や絶滅危惧種を含む独特な陸域生物にとって、全体として世界的にかけがえのなさが高い地域であり、独特で豊かな中琉球及び南琉球の生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息・生育地を包含した地域である。

環境省サイト奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島 遺産地域の特徴から)

一足先2005年に世界自然遺産登録がなされた知床は世界自然遺産の管理をどのようにしているのか?実際に斜里町と羅臼町にまたがる知床地域の管理や研究をしている知床財団の事務局長からお話を伺い、実際に知床5湖の周辺をフィールドワークとして巡ってきました。

フィールドワーク途中で発見した熊の足跡です。

この財団は施設の管理、オーバーツーリズム(オーバーユーズ)の規制、利用者に対しての教育、子どもたちをはじめとする知床や野生動物情報の周知、生態の研究などなど、行う業務は幅広く奥深く、住民や商業者との調整なども行っているようです。

知床が抱える課題~利用者の集中

知床は2005年に世界自然遺産に登録され、年間約170万人の観光客が訪れる国立公園です。

一大景勝地として知られる「知床五湖」には毎年観光客が集中します。
特に5月の大型連休や8月のお盆休みの時期には駐車場に入るための車が列をなし、ピーク時にはその渋滞の長さが1キロに及ぶこともあります。

知床が抱える課題~ヒグマと人とのあつれき

知床は世界の中でも高密度にヒグマが生息している地域です。そのため、国立公園内のドライブ中にヒグマを見かけるといった状況は決して珍しいことではありません。「ヒグマを見かけても車から降りない、近づかない」が知床国立公園のルールですが、実際はヒグマを一目見たいと車から降りたり、撮影したくて立ち止まる人だかりができ、道路が路上駐車の車で溢れるといった状況が起きています。中には過剰にヒグマに接近して撮影する観光客もいます。この「クマ渋滞」は他の車の通行の妨げになるほか、人身事故の引き金にもなりかねません。

新たな取り組み~移動を、サービスに

利用の集中による渋滞、ヒグマとのあつれきの問題を解消するために2020年から始まった社会実験が「知床バスデイズ」です。10月の3日間、知床自然センターからカムイワッカ湯の滝までの区間をシャトルバスのみでつなぎ、適正なアクセスコントロールを行いつつも、移動そのものを楽しめるサービスを目指しました。マイカー規制というとネガティブなイメージがありますが、シャトルバスには地元の自然ガイドが同乗し、利用者は渋滞にはまることなく、バスの中から安全に野生動物との出会いを楽しむことができるという移動サービスを試行しました。

単なる移動手段であるバスを知床らしい体験が提供できる「サービス」へと転換したこの取り組みが、今後、知床の新たな利用システムを作りあげていくための第一歩になることを期待しています。

上記、知床財団のサイトからですが、沖縄と同じように自動車の渋滞というものは非常に課題となっているようです。知床では車両規制するなどの実証実験を行っているものの、周辺の宿泊施設など商業との兼ね合いが難しいとのお話もありました。実際に我々が視察に言ったときにも山菜を取りに来る地元の方もいらっしゃいましたし、最近でも違う場所ですが(令和5年5月15日朝日新聞デジタル)北海道でヒグマに襲われた釣り人が亡くなったケースも報道がなされていましたので、安全面についても慎重な対応が求められます。沖縄ではヒグマはいないにせよハブはいますので。自然の中に入るのは危険と隣り合わせでということを利用者にも認識してもらわねばなりません。

知床ではヒグマの対策として以前は訪ねてきた際に、熊の出没状況で遊歩道が閉鎖されていることもあったようですが、電気が流れて熊が近づかないで安全に見ることができる高架の通路ができていました。

このおかげで、ヒグマの姿が見えたときも避難できる場所があるということで、安心してフィールドワークができます。加えて、ヒグマが活発に動くときには必ずガイドと共に入るということが義務となります。

普段の生活圏ではない地域と生活圏と重なる地域の違いはあるにせよ、西表島は船でしか入れないので、ある程度の規制をすることは可能かもしれませんが、やんばる地域は特に生活や商業とのバランスを上手く考えねばならないと感じます。

そして管理運営の課題として公益財団法人としては、寄付も集めやすいが利益を出すのは難しいということで、資金が自転車操業であり、そのため新型コロナの感染拡大などで、人の動きが止まった時は、運営継続に課題が出ることもわかりました。

県内では財団をつくるかはさておき、西表とやんばるの2箇所ありますので、それぞれが持続的な管理運営をするために先進地のケースを学びながら独自の手法を作り上げる必要があると思われますので、環境省や県担当課職員、そして当該市町村の関係者との綿密な連携を行う必要があると感じました。

北の国から その1(北方領土について)

沖縄県では領土領海の話をするとよく話題に挙がるのが「尖閣諸島」についてです。尖閣諸島が領土編入された翌1896年(明治29年)にはアホウドリの羽毛採取事業と開拓がなされ、その後には鰹節工場もあったようです。尖閣諸島について歴史など詳しくは内閣府の尖閣諸島研究・解説サイトをご覧になってみてください。現在はしばしば中国の海警局の船が排他的経済水域や領海を侵犯してくると報道がなされています(海上保安庁HP尖閣諸島周辺海域における中国海警局に所属する船舶等の動向と我が国の対処

一方、県内では報道などではあまり触れられることのない「北方領土」について北海道では行くところどころで目にしました。北方4島とは北から択捉島・国後島・色丹島・歯舞群島のことです。日本で1番大きな島は択捉島、次が国後島、そして沖縄本島、佐渡島と続きます。歯舞群島を行政区として所管する根室市では納沙布岬から貝殻島までの距離は3.7Kmと非常に近い場所にあります。ちなみに泊港から渡嘉敷島まではおよそ30Kmです。

根室市の副市長や議長とのお話をする機会もありました。4島合計で3,124世帯、合計17,291人の方々が1945年日ソ中立条約を破り、ポツダム宣言受諾後に敗戦を明確にした後に侵略続けてきたソ連により強制的に退去させられました。

1951年のサンフランシスコ平和条約でも日本は千島列島と樺太南部は放棄しましたが、北方4島は放棄した中に含まれておりません。現在も北方4島ではロシアによる不法占拠が続いており、この領土問題が存在するため、戦後70年以上経った今なお、日本とロシアの間では平和条約が締結されないままとなっています。(外務省HP日本の領土をめぐる情勢 北方領土

ポツダム宣言はその前のカイロ宣言の領土不拡大の原則を引き継いでいるため、国際法上不法占拠であるということで、日本は返還するように求めています。島民1世は すでに平均年齢が80代ということで返還は急がれるものです。

北方4島の周辺は漁獲が豊富な漁場となっているために、毎年ロシアとの漁業交渉がなされています。ちょうど私が北海道に入った直前の4月21日には貝殻島の周辺での昆布漁が妥結し、翌日には大きく報道されていました(NHK北海道NEWSWEB4月22日)が、この報道内容も沖縄県ではなかなか知らされることはありません。

 しかし、我が国固有の領土である北方4島の周辺での漁業をするために、なぜロシアとの交渉が必要なのか?第1管区海上保安本部でお話を伺いましたが、ロシアが不法な実行支配を続けているため、漁民が周辺での漁をした際には拿捕して船員を逮捕する、船を没収する、などが現に行われており、今後も可能性が高いためです。実行支配がなされるということはこのようなことなのです。万が一、尖閣諸島が同様になった場合、八重山の漁民も拿捕される可能性があります。

2020年現在、北方4島合計で18,000人が住んでいると言われていますが、沖縄本島と同じくらいの大きさの国後島には8,600人程度のロシア人が住んでいると記述されていました。(沖縄本島が約135万人)非常に広大な土地であると言えます。返還がなされた場合には領土、領海、排他的経済水域と非常に日本の漁業や農業に関して大きな領域が戻ってきます。

また、日本には他に竹島(島根県)が韓国との領土問題があると言われています(竹島に関する研究・解説サイト)が、これはまた別の機会に。

ちなみに尖閣諸島には領土問題は「ない」日本固有の領土であるということになっています。(内閣官房 領土・主権対策企画調整室 国際社会の法と秩序を尊重する日本の対応