沖縄の和牛生産農家が現在、非常に厳しい状況にあります

沖縄県は、和牛子牛の主要な生産地の一つとして知られています。農林水産省の「畜産統計(令和6年2月1日現在)」によれば、九州地方が肉用牛の飼養戸数で43.8%、飼養頭数で36.4%を占めています。沖縄県は九州地方に含まれ、この地域の和牛子牛生産に大きく寄与しています。

しかし、和牛子牛価格はここ数年下がり続けており、農家にとって大きな打撃となっています。2023年の子牛の平均価格は約48万円前後で、前年と比べて10万円以上も値下がりしました。背景には、飼料代の高騰や牛肉需要低迷があります。

牛肉の消費が減っている理由は、値が高く、安い輸入牛肉や豚肉や鶏肉へと移動していること。また、コロナの影響で外食や観光が減り、高級和牛の需要が落ち込みました。さらに、健康志向や手軽さを重視する食生活の変化、そして環境問題への配慮から牛肉を控える人も増えているようです。

具体的な事例として、昨年2023年から、全国的に焼肉店の廃業が取り沙汰されています。2024年に発生した「焼肉店」経営事業者の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は、9月までに計39件。2023年の同期間(16件)から倍増しており、7月末時点で2019年通年の件数(26件)を上回り年間で過去最多を更新した。ただ、個人営業など小規模店の廃業を含めれば、実際はより多くの焼肉店が市場から退出したとみられています。

帝国データバンクは、2024年1-9月における「焼肉店」の倒産発生状況について調査・分析を実施。結果をグラフにまとめて発表しています。

コスト増は畜産だけでなく園芸にも当てはまりますが、特に畜産ではロシアとウクライナの戦争が影響し、飼料となる穀物の価格が世界的に上がったことで、農家の生産コストが大幅に増えています。また、新型コロナの影響で外食産業の需要が減ったことから、牛肉を育てる農家が子牛の購入を控えるようになり、子牛の市場も停滞しています。そのため、子牛の販売価格が生産にかかるコストを下回ることも多くなり、農家の収入が大幅に減少しています。

沖縄県では、こうした問題に対応するために「和牛子牛価格安定特別対策事業」を実施しています。この制度では、子牛の価格が基準を下回った場合、その差額の90%を補填して農家を支援しています。たとえば、2023年5月には1頭あたり約4万8,500円、6月には約7万1,200円が補填されました。しかし、多くの農家は「これだけでは足りない」と感じており、抜本的な対策が必要だとの声が上がり、沖縄県議会に対しても陳情があげられています。

また、飼料価格の高騰に対しても、県が補助金を出して農家を支えています。輸入飼料の費用を一部補助する「粗飼料価格高騰緊急対策事業」や、混ぜ飼料の購入費を補填する「配合飼料価格差補助緊急対策事業」が行われています。しかし、こうした支援策にも限界があり、「根本的な解決にはなっていない」という意見が多いです。

2024年になると、年初の子牛価格は引き続き低迷していましたが、年末に向けて少しずつ回復してきました。12月の平均価格は約46万円で、前年の同じ時期より約6万円上昇しました。ただし、地域や市場によって価格にはばらつきがあり、一部では依然として低価格のままです。そして、年明けのご祝儀相場が終われば、また落ち込むのではないかとも言われています。

飼料や資材のコストが依然として高いことから、たとえ子牛の価格が上がっても、農家の手元に残る利益は少なくなっています。このため、多くの農家が経営の持続可能性について不安を抱えています。

沖縄県や国の支援策は一定の成果を上げていますが、それだけでは農家の経営を根本から改善するのは難しい状況です。長期的には、国内での飼料生産を増やしたり、沖縄ブランドの価値を高めるような新しい取り組みが求められています。高付加価値の商品を開発したり、効率的な生産方法を導入することが考えられます。

沖縄の和牛子牛市場は、価格の下落とコストの高騰という二重の課題に直面しています。県や国、農家、そして関連する業界が一緒になって、この困難を乗り越えるための計画を立て、実行していく必要があります。これが成功しなければ、沖縄の畜産業は持続可能な発展どころか存続すら遂げることができない状況にあるといっても過言ではないと考えます。

8月には委員会でセリ市場を訪問し、畜産の生産者の皆さまと意見交換を行いましたが、まだ根本的な課題解決には至っていませんので、今後も県・国への働きかけを行ってまいります。