HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種について

先月29日に自民党の総裁選挙が行われました。岸田文雄元衆議院議員が、総裁となり、10月4日の臨時国会にて第100代総理大臣の指名がなされ岸田内閣が誕生しました。

新型コロナ感染拡大の中、急遽の登板となった菅義偉総理は本当に誰も経験したことのない困難の中、火中の栗を拾う思いだったのではないでしょうか。ありがたいと思います。

しかし菅内閣は本当に様々決断を要する仕事をした、まさに仕事人内閣でした。任期末ギリギリとなって以下のようなニュースがあったのも驚きです。

朝日新聞デジタル 2021年10月1日 18時00分

子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンの接種について、「積極的勧奨」が再開される方向になった。1日に開かれた厚生労働省の検討部会が安全性や効果などを検討し、「勧奨を妨げる要素はない」と確認した。今後、厚労省は再開に向け、接種後に症状が出た場合の診療体制や情報提供のあり方などを議論していく。

全国でも毎年1万1千人が罹患し、毎年3000人前後の死亡者、沖縄県内でも昨年で100人ほどが亡くなっています。

ワクチン接種と定期検診でかなりの予防ができ、罹患が少なくなるということで、私の周囲の医療者からは接種の推奨が言われていました。

HPVワクチンは平成25年4月に予防接種法に基づき定期接種化されましたが、接種と因果関係を否定できない持続的な疼痛が本ワクチンの接種後に特異的に見られたことから、同副反応の発生頻度等がより明らかになり、国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではないとされ、現在は自治体から接種対象者に個別に接種を奨めるような積極的勧奨は中断されています。

今回の新型コロナのワクチンでも副反応の話が出ておりますように、ワクチンにはもリスクもメリットもあります。

最近の報告では、HPVワクチンと子宮頸がん検診が最も成功しているオーストラリアでは2028年に世界に先駆けて新規の子宮頸がん患者はほぼいなくなり、世界全体でもHPVワクチンと検診を適切に組み合わせることで今世紀中の排除(症例数が人口10万あたり4人以下)が可能であるとのシミュレーションがなされました。日本においてこのままHPVワクチンの接種が進まない状況が今後も改善しないと、子宮頸がんの予防において世界の流れから大きく取り残される懸念があると言われていることで、接種メリットが大きいと言うことで、今回の方向性の確認に繋がったのかと思います。

行政はしっかりと情報を公表して、本人と保護者に情報確認して判断いただければと思います。

現在は積極的勧奨はなされていませんが、公費での接種が可能です。しかし対象が12歳~16歳なので、勧奨していなかった期間で接種の存在を知らなかった世代がいます。自費なら5万円ほどかかるので、その世代の支援をしてほしいと、県議会の文教厚生委員会で要望いたしました。

HPVの感染経路は、性的接触と考えられます。ワクチンの接種推奨に加えて、性教育を進めていくことも重要になります。

近年では幼児期からの性教育が徐々に一般化してきましたが、子ども達の将来を考えると更なる充実が必要だと思います。予期せぬ妊娠出産は貧困やDV(家庭内暴力) につながると言われます。これは沖縄県にとっても非常に大きな問題です。妊娠・避妊・性感染症などに対する正しい知識を持ち、自ら考え、自らの意思で行動できるようになることが負の連鎖を食い止めることにもなりますので、命を守り生活を守ることになると考えます。

参考

HPVワクチンQ&A 厚生労働省

『子宮頸がんとHPVワクチンに関する最新の知識と正しい理解のために』公益財団法人日本産婦人科学会

性教育が必要な理由公益財団法人日本産婦人科医会