鉄軌道と先端技術の活用について

琉球新報 100年前、沖縄に路面列車があった…レール現存 那覇と首里結ぶ

路面電車が開業したのは1914年5月1日。首里と大門前(現在の東町)を結ぶ全長5・7キロを片道32分で運行した。17年9月に大門前―通堂間、1.2キロが延長された。路線バスの運行開始で収益が悪化し33年3月に運行停止した。

(琉球新報 2021年5月22日 20:00)

最初の路面電車は首里を通っていたんですね!

沖縄人車軌道(後の沖縄馬車軌道)の与那原 – 小那覇間、沖縄県営鉄道が那覇 – 与那原間、那覇を中心に嘉手納、与那原、糸満を結ぶ3路線を完成させ、沖縄電気も路線を延伸。さらに那覇と糸満を結ぶ糸満馬車軌道というももが、沖縄の鉄道の最盛期だったようです。その後に、道路の整備が進められ、鉄道よりも自動車での移動が主流となり、沖縄戦が追い打ちをかけて県内の鉄道は廃線となってしまいました。時に鉄道を再開したいという機運は高まるものの、なかなかうまくいかずに2003年にやっと現在の沖縄都市モノレールが開業しました。

加えて、那覇から名護までの鉄軌道を設置したいという話も上がっていますが、現在時点ではあまりパッとするものではありません。現在のところB/C(ビーバイシー、便益を経費で割る数字)が1を超えればいいという話があります。

この数字は「事業仕分け」で今なお使われております。現計画では1を下回っているということで、国はこの計画に対して非常に懐疑的な意見を述べています。1を下回るとコストに対しての効果が低いと判断されるようです。しかし、インフラはその後の周囲の発展など当初予測が難しいものもあります。これは本当の便益をすべて反映させられているかは正直なところ不明だと私は思います。そこから、さらに何かしらの効果が生まれてくる可能性もあります。

建設は「公」運営は民間…沖縄の鉄軌道「上下分離方式」検討へ 内閣府方針

(琉球新報2022年3月25日 12:18)

鉄軌道導入で、県が求める公設民営による「上下分離方式」での事業着手について、内閣府は24日までに「整備の在り方」として検討材料にする方針を示した。衆院沖縄北方特別委員会で、鉄軌道を含めた公共交通システムの導入などを求める付帯決議が採択されたことも踏まえて対応するとした。23日の参院政府開発援助等及び沖縄北方特別委員会での伊波洋一氏(沖縄の風)への答弁。

そんな中で、このような記事が上がっておりました。沖縄県としてはB/Cが1を超えるために上下分離方式を要望してきましたので、検討されるということは非常に良いと思います。

上下分離方式のわかりやすい記事がありましたので参考までに。

国や自治体からの支援に頼る形態では、経営努力により赤字が圧縮されるとその分支援も減少することが多い。上下分離方式を導入すれば、施設の維持管理という重荷から解放されることで、経営努力によって利益が生じれば、それを投資に回すことができるというメリットも生まれる。

線路と車両を県が所有しすることで施設の維持管理の責任は県が、運行に関しては事業者が責任を持ちます。

以前、ドイツへ行ったときに気がついたのですが、ドイツ鉄道はDB Bahn(DBバーン)旅客列車の運行を担当、長距離輸送・地域輸送・カートレインを含むDB Schenker(DBシェンカー)貨物列車の運行を担当。DB Netze(DBネッツェ)軌道の保守管理、駅の運営管理を担当しているということで、DBの線路を使って他の会社が列車を走らせていたのには驚きました。また、それがDBの半値以下!安かったんです。(上がDB、下はその路線を使っているFLIX TRAIN)

また、特に沖縄県は那覇市近郊に住居が密集していることもあり、そこでの利便性も高い反面、他の地域との差が開くと言われています。さらに密集することでの課題もあります。

実際に那覇市では団地(市営・県営住宅)、保育園や老人ホームなどを建てる際にはかなりの土地代がかかります。だから施設利用の待機が多く存在することになりますので、これが地方で3世代、4世代が住む広々とした住まいがあれば我々の暮らしが変わるのではないかと言う方もいます。

鉄道など定時制、なおかつ高速の移動手段があれば住居地域を分散させることも可能ではないかとも言われていますので、その施設も分散化することもできます。名護に住んで、1時間ほど電車に乗って那覇で仕事も可能なわけです。

しかし、線路を引き鉄軌道の整備をするにはコストも時間もかかるということ、先程のB/Cの数値が改善しないということもあり、なかなか開発が進まない状況となっています。ので先述の上下分離方式に加えて新しい取り組み、特区や先端技術の活用をすることでその補いが重要ではないかと考えます。

中国ではスマートレール(HatenaBlogより)というレールのいらない電車が走っています。(下の写真はhttp://ja.greatmagtech.com/から)

レールを特殊車両で塗装するとその線を読み込んで電車が線路に沿って動くのです。そうすると線路の引き込み費用が軽減され、コースを変更することも容易いということになります。このような技術を用いて実証実験などを行う環境は離島県だからこそできるのではないかと私は考えています。那覇市もLRTの構想をしていますが、那覇市は先程も述べたように土地単価が高い、加えて狭いということもありますので、那覇市こそこの技術の検討が必要ではないかと思います。

【参考】

沖縄鉄軌道計画

・Afpbb「軌道」は道路上の白線だけ スマートレール電車が中国・湖南で試運転 2017年10月27日 12:57 発信地:中国 [ 中国・台湾 中国 ]

京都大学 都市社会工学専攻 藤井研究室 公共事業「仕分け」を仕分けせよ