部活の地域移行について

沖縄県では教員の不足が非常に問題となっています。特にこの2月定例会前に報道にもかなりの掲載があったことで議会質問でも活発に議論されています。正規採用が少なく臨時任用職員の比率が高いという課題もあります。精神疾患での休職者も全国一多い状況です。朝も早くから夕方、児童生徒が帰っても学校に残る先生方もいます。部活動の顧問も負担になっているとの話もあります。

中学校の部活動で指導を担当する教員は、平日朝から授業を行い、放課後に部活動の指導も兼務すると当然ながら長時間労働となります。休日でも練習や大会などへの引率は教員にとって負担が大きいものとなっていました。教員の負担軽減、働き方改革の一貫として部活動の地域移行が始まりました。(運動部活動の地域移行について スポーツ庁地域スポーツ課 令和4年7月)

2022年6月スポーツ庁の有識者会議での「運動部活動の地域移行に関する検討会議提言」には目指す姿や改革の方向性が提示され、2023年度から3年間を「改革推進期間」とし、今後地域移行の準備が進められる予定です。これは公立中学校における休日の運動部の部活動を外部に移行する部活動改革の1つです。移行先は地域のスポーツクラブや民間企業、スポーツ少年団などが見込まれます。現在は運動部の地域移行が進められる予定ですが、今後、文化系の部活動においても運動部と同様の地域移行が行われると見込まれています。

出生数の低下(2022年は80万人を下回る急激な少子化)もあり、なかなか一つの学校でチームを作れない競技も増えてきました。移行先では複数の中学校で集まることが可能となります。ただし、生徒数が多い少ないでも保護者の考えは変わります。合同チームを作らなくても各学校で活動ができるのであれば問題ない。しかし、生徒の少ない学校では競技を選ぶこともできないので、隣接校へと進学する中学生もいるわけです。

しかし、11月に出た指針案では当初の2025年としていた達成時期を設定しないことが記載されたので、まだまだ先行きが見えないと言うところです。

少子化対策と教員の働き方改革の2つの大きな目的がこの部活動の地域移行にはあります。教員の部活による負担を減らし、本来の教育に集中できるようになるのがメリットとして挙げられます。しかし、もちろんメリットもあればデメリットもあります。

部活動は、教員が指導をしていたため、保護者の金銭的負担は最小限で済んでいました。しかし地域移行が進むと、地域のスポーツクラブや民間企業などへの会費や指導料など月謝の支払いが必要となってきます。生徒の送迎も必要となった場合は、送迎の手間がかかる可能性もあり、金銭的または時間的な保護者の負担が増えるかもしれませんので、経済状況が原因で参加できなくなる生徒が増えることの格差が生まれる懸念もあります。

指導人材確保も大きな課題の一つです。競技の種類によっても人材確保に関わる状況は大きく変わり、地域内で適切な人材が見つからないこともありえます。競技内容や居住地域によっては参加機会の格差が生じる可能性もあります。私は中学から剣道部に入部し現在も続けております。部活動を通して出会ったスポーツ・武道・文化系の活動など部活動は本当に多くの方々との出会いや、様々な知識・知恵、忍耐、やり抜く力などを与え てくれました。学校教育の中でも非常に大きな役割を担ってきたのではないでしょうか。その恩返しをしたく私も過去に剣道の外部指導者として携わったことがありますが、時間の調整が難しかった記憶があります。

移行のさなかではありますが、指導者の件で以下のような記事も上がっていました。

各自治体の報告書でも、課題が浮かび上がった。山形県の鮭川村立鮭川中では、野球部など三つの部活で休日の活動を地域移行した。指導者は地域指導者3人と教員2人が担当。課題を指摘する意見として、「(一部を教員が担っているため)部活動の延長と捉えている生徒・保護者が多い」「大会要項に教員の引率が参加条件として記載されているものがある」などがあった。

鳥取県境港市の報告書は、指導者の確保が大きな課題だとした。毎週時間がとれて、青少年の健全育成につながる指導ができる指導者はそう多くないと指摘。現職の教員が休日の指導員を担当する形を「とらざるを得ないのが実情」だとした。

石川県能美市の報告書は「教員がいないと使用できない学校施設がある」とし、場所の確保を課題として挙げた。栃木県矢板市の報告書は「生徒指導・安全管理面で教員の力が必要になる場面がどうしてもあり、教員が離れきれない」と指摘した。

県内でも様々な理由で部活動の地域移行について沖縄県内でも議論が進まないという話は聞いています。保護者からも「報道を通して何となく聞いているが、学校からの細かい説明はない」部活動改革、特に地域移行に対する理解は進んでいないとの声があります。

そんな中、県内どころか全国の中でも「うるま市」が地域スポーツクラブの運営をする民間企業(スポーツデータバンク社)と組んで先端を行っています。

「未来のブカツ」 サービス業としての地域スポーツクラブ創出事業(経済産業省 METI Journal ONLINE)

うるま市の嘉手苅教育庁はリンク先で以下のようにお話をしています

「体育施設はもちろん、学校の施設を活用して、例えば、音楽室でピアノ教室を開く、家庭科室で料理教室を開く。学校の施設を民間に開放して、運用することも将来は考えていきたい」

「部活動が変われば部活動が行われている学校の施設のあり方も多様化していいのでは」

と、さらに学校体育施設の有効活用も含めた地域活性化「総合型放課後サービスの展開」も模索しているようです。

また、民間企業の社長からは以下のような話もありました。

「少子高齢化が進めば、財政負担も考慮した上で、学校と公共施設を敢えてすみわけず、お互いに有効利用することを考えるべき時期がくるかもし れない。教育現場(学校)に最新の設備を導入して、それを地域に開放して共有するという発想もあるのでは」

海外では学校施設を民間が所有して昼間だけ学校に貸し出し、その後は民間活用をしているケースもあるようです。少し話はズレますが、県外ではプールを整備せず、民間のスイミングスクールで授業を行うことで「プロに指導してもらう授業」ということも行っています。体育の中の水泳専科として特化した授業を行えるようになれば先生方の負担も減ります。いつも顔を合わせる学校の先生以外に学校外の専門家が関わることは子どもたちにとっても良い影響が出るのではないでしょうか。

財政面でも企業版ふるさと納税を基金として活用した事例として日経新聞にもとりあげられていました。(部活改革で先行 沖縄県うるま市、元プロやふるさと納税 日本経済新聞2023年1月20日 11:00)

国が打ち出した部活動の「地域移行」の先進事例として、沖縄県うるま市の取り組みが注目されている。民間企業と連携して元プロ選手らを指導者に迎え入れるほか、事業の財源には法人が自治体に寄付する企業版ふるさと納税を活用する。教師の負担軽減から始まった同市の試みは、スポーツによる地域活性化へのチャレンジでもある。

また、部活動の地域移行を行うことで、スポーツや文化活動を継ぎ目のない形で継続することもできます。加えて地域移行が部活動だけではなく、活動する競技などに親しむ環境として整備されれば大人になっても体験することができるようになり、地域の人たちとの結びつきが強まるのではないかと思います。いわゆる生涯スポーツです。幼い頃から様々な運動や文化活動に関わる体験をすることで、その子どもたちの活躍できる幅や可能性を高めることにも繋がります。

学校教員の働き方改革という命題も加わって、この流れは止まることはないと思いますが、先述のように、まだ考え方が浸透しない段階ですので、今後の理解を広げ深めていくことはとても重要です。まだ行政改革を行える部分は多くありますので、できるだけ負担を減らし、最も効果の高い仕組みづくりのためにも皆様からもご意見を賜りますようお願いいたします。

しかし、部活動の地域移行の記事がなぜ経産省なんだろう??