沖縄の出産環境を守り抜くために:第8次医療計画と「周産期連携拠点」の必要性

「子宝の島」として知られるわが沖縄県。しかし、その輝かしい称号の裏側で、お産の現場がかつてない危機に直面していることを皆さんはご存知でしょうか。令和6年の沖縄県の合計特殊出生率は1.54と、40年連続全国1位を維持しているものの、県内としては過去最低を記録しました。出生数はこの10年で5,000件以上も減少しており、少子化のスピードは想定を上回っています。

先日の議会質問において、この深刻な現状を数字で示し、県に対して「安心して産み育てられる環境」の維持に向けた抜本的な対策を強く求めました。今回のブログでは、議会での議論を踏まえ、特に離島を抱える沖縄特有の課題である「離島妊婦への支援」や、私が提唱する「周産期連携拠点」構想について、お伝えします。

1. 加速する施設減少と「お産難民」への懸念

現在、沖縄の出産現場における最大の課題は、分娩施設の急激な減少です。県内の分娩取扱施設は、経営悪化や医師不足を背景に、令和4年度の31施設から、令和7年12月には24施設へと、わずか3年余りで約2割も減少しました。

特に深刻なのは産科診療所(クリニック)です。過去5年間で19施設から11施設へと大幅に減少しており、このペースで施設減少が進めば、地域によっては身近な場所でお産ができなくなる「お産難民」が発生するリスクが現実味を帯びています。南部医療圏では施設減少の影響で、新規妊婦の予約が1ヶ月待ちになるという事態も報告されています。

背景には、産婦人科医の偏在と高齢化があります。沖縄県の産婦人科医師数は172名ですが、男性医師の6割が50歳以上となっており、地域の診療所が分娩を断念するケースが相次いでいます。

2. 特に離島の妊婦が直面する「移動と滞在」の高い壁

沖縄県にとって、離島に住む妊婦さんへの支援は最重要課題の一つです。宮古・八重山といった先島地区や周辺離島では、産科医療従事者の確保が困難な状況が続いています。また、北部地区では、地域内での分娩完結率が約70%にとどまっており、多くの妊婦さんが遠方の病院へ移動せざるを得ません。

現在、県は「沖縄県離島患者等通院費支援事業」を通じて、離島妊婦の通院費を支援しています。しかし、出産が近づいた時期の「滞在支援」については、まだ十分とは言えません。

離島の妊婦さんやその家族にとって、出産予定日の数週間前から沖縄本島に滞在するための宿泊費や、その間の家族の生活維持は、精神的にも経済的にも極めて大きな負担となります。私は議会において、単なる交通費の補助に留まらず、妊婦さんだけでなく付き添う家族も含めた「事前滞在支援」を強化すべきだと訴えました。

3. 私が提案する「周産期連携拠点」とバースセンター

こうした多面的な課題を解決するための切り札として、私が県に正式な検討を求めたのが「周産期連携拠点」の整備強化です。これは、医療・福祉・滞在支援を一体的に提供する新しい医療モデルです。その核となるのが以下の機能です。

  • 助産師主体の「院内助産(バースセンター)」の導入: 正常な経過の分娩(ローリスク分娩)を助産師が主体となって担い、異常時にはすぐに産科医が対応する「二重構造」を確立します。これにより、多忙な産科医の負担を軽減しつつ、妊婦さんの「自分らしい自然なお産」をサポートできます。
  • 離島妊婦・家族のための宿泊・滞在機能: 拠点の近隣に、離島から来る妊婦さんや家族が安心して過ごせる滞在施設を確保します。
  • 産後ケアと貧困対策の統合: 沖縄の10代の出産割合は1.5%と全国平均(0.6%)の2.5倍高く、若年妊産婦が生活困窮に陥るリスクが高い現状があります。妊娠中からの継続的な相談支援と産後ケアを、貧困対策と一体で提供します。

県側もこの提案を受け、第8次沖縄県医療計画において、全ての周産期母子医療センターでの院内助産実施を目標に掲げました。令和4年度はゼロでしたが、令和7年度には2施設に増加する見込みです。知事からも「議員御案内のバースセンターのような拠点化整備を検討すべきという意見もあり、検討を進めてまいりたい」との前向きな答弁を得ることができました。

4. 経済的負担の軽減と情報の「見える化」

ハード面の整備と並行して、経済的支援の透明化も進んでいます。

  • 「出産なび」の活用: 厚生労働省が運営するWebサイト「出産なび」では、県内各施設の費用や院内助産の有無、LDR室(陣痛・分娩・回復を同じ部屋で行える個室)の設置状況などが比較できるようになりました。
  • 自己負担の無償化へ: 2026年度を目途に、標準的な出産費用の自己負担無償化(保険適用)に向けた議論が国で進んでいます。
  • 妊婦健診の公費負担: 沖縄県内41市区町村のうち36自治体が、望ましい基準の検査項目について自己負担が発生しない額を設定しています。

おわりに

子どもは宝です。しかし、その宝を安心して迎えられる環境が揺らいでいる今、政治がなすべきことは明確です。

離島に住んでいても、若くして母になっても、経済的に苦しくても、誰もが等しく、住み慣れた地域で、最適な医療と温かい支援を受けられる社会。そのためには、分娩施設の「集約化」と、バースセンターのような助産師の力を最大限に活かす「機能分化」を組み合わせた、沖縄独自の新しい周産期ネットワークの構築が急務です。

「周産期連携拠点」の実現に向け、医療・福祉・行政が一体となった仕組みづくりを、引き続き全力で推進してまいります。皆さんと共に、沖縄がこれからも「世界一安心して産み育てられる島」であり続けるために。

Think & Talk about Now. 沖縄の未来を、今、共に考えましょう。


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