PFASってなんだろう?

沖縄で問題になっている「PFAS(ピーファス)」という化学物質は、水や油をはじく性質を持つため、泡消火剤や防水加工、包装材などに長年使われてきました。このため便利な製品に使われてきた一方で、世界中で自然に分解されにくく、体や環境に残りやすいことが分かっています。健康への影響が指摘されるようになり、水道水や地下水の安全性をどう守るかが社会的な課題になっています。

沖縄では2016年に比謝川(ひじゃがわ)などの水源から高い濃度のPFASが検出されたことが発端となり、地元の水道事業者が浄水場での除去対策を進めています。県が行ってきた調査では、基地周辺の川や地下水から基準を超える数値が出る例があり、地域の関心が高まっています。

この問題に関連し、2026年1月に 琉球新報が社説で報じた記事 では、米軍自身が基地周辺でのPFAS汚染の可能性を認めているとの指摘が出ています。具体的には、米軍が嘉手納基地と普天間飛行場周辺でのPFAS汚染について、「過去の消火訓練による可能性が高い」との考えを日本政府に伝えていたと報じられています。しかし、この事実を日本政府が十分に公表していないとの批判が掲載されています。琉球新報は、日米両政府が調査経緯を明らかにし、沖縄県による基地内の立ち入り調査を認めるべきだと論じています。

この報道は、従来の論点に新たな角度を与えています。それは、基地が原因である可能性を米軍自身が認めていたという可能性です。ただし、現時点で科学的な確証があるかどうかは公開されたデータでは明確に確認できません。米軍が可能性を認めたと言われる背景には、アメリカ本国でのPFAS規制が進んでいる事情が影響しているとの指摘もあります。

ここで重要なのは、原因の特定が進んでいないために、立ち入り調査が実現できていないという制度的な壁です。県はこれまで複数回にわたって基地内への立ち入りを申請していますが、米軍側はこれを認めていません。防衛省経由の回答として、根拠となる明確なデータがないことが理由として挙げられているとされています。

しかし、このような「証拠がないから調査しない」という対応は、問題の全体像を解明することを困難にしています。事実として、沖縄では県企業局が2016年以降、PFAS対策に多額の費用を投じてきました。2026年1月時点で約39億円が投入されたとの報道もあります。これは、除去対策や浄水場の処理設備などにかかった費用とされています。

なお、沖縄県庁では、2023年6月に地下駐車場でPFAS(有機フッ素化合物)を含む泡消火剤が誤作動で流出し、久茂地川へ流出する事故が発生し、9月に公表されました。この流出は、2015年度の同種の事故に続くもので、発がん性などが指摘されるPFASによる汚染と県の対応の遅れ(3ヶ月以上)が問題となり、専門家や市民から批判の声が上がり、那覇市議会でも抗議決議がなされました。県庁PFAS、指針の1534倍 2023年6月に漏出 湧水槽壁面を調査 沖縄タイムス

また、沖縄以外でもPFASが検出される例があり、工場跡地や空港周辺などでも問題が起きています。(全国でPFASの検出相次ぎ、政府が対応策 「水の安全確保」へ実態把握と対策急務)つまり、PFASは基地がある地域に限られた問題ではなく、日本全体の水環境と健康の課題として捉える必要があります。

こうした状況を踏まえると、PFAS問題に対して誰が責任を持つのかを考え直す必要があります。これまで基地由来かどうかの議論に多くのエネルギーが費やされてきましたが、原因が明確でない段階でも、住民の健康や生活を守るための制度的な対応が求められています。

まず、国の責任としては、水道水の安全基準や健康への影響を評価し、全国的な対策を整備することがあります。日本では厚生労働省がPFOSとPFOAについて暫定基準を設けていますが、2026年4月以降は正式な水質基準となる見込みです。これにより、各地の水道事業者は基準値を守る責任を負いますが、浄水処理のランニングコストなどの負担が事業者側に重くのしかかります。

次に、浄水処理技術や財政支援の制度設計を進めることが国交省の役割となります。水道事業者や自治体が高度な浄水処理設備を導入し続けられるよう、国が財政面で支援する仕組みが重要です。これは、沖縄だけではなく全国の水道行政の基盤を強化することにつながります。

さらに、沖縄のように基地が集中し、水源が限られている地域については、内閣府が全体調整の役割を果たすべきだという考え方があります。基地問題が絡むことで複数の省庁の役割が縦割りになりがちなため、包括的な対応が必要になります。

このように、PFAS問題は単なる米軍基地問題や環境問題ではなく、国の責任分担と制度全体の見直しを促す課題になっています。基地由来か否かを巡る議論は重要ですが、同時に、原因が不確定でも住民の生活を守る仕組みを整えることが急務です。水の安全は誰にとっても等しく重要であり、国が責任を持って制度を整えるべきだと考えます。

参考サイト

環境省「有機フッ素化合物(PFAS)」
https://www.env.go.jp/water/pfas.html

沖縄県「有機フッ素化合物について」
https://www.pref.okinawa.lg.jp/kurashikankyo/kankyo/1004418/1028431.html

沖縄県水道水質基準(PFOS・PFOA)
https://www.eb.pref.okinawa.jp/sp/water/82/3017

科学技術振興機構サイエンスポータル(PFAS総論)
https://scienceportal.jst.go.jp/explore/review/20240906_e01/

琉球新報(社説)「PFAS汚染源認める 米軍、政府は不誠実改めよ」
https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-4974710.html

ダイキン、PFAS対策に450億円超投入 それでも払拭できぬ地域の不安
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00155/091100259/

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