令和8年(2026年)沖縄は選挙イヤー
新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、本年、令和8年(2026年)は沖縄県においては沖縄版統一地方選挙イヤーとなります。

戦後直後、日本では地方自治制度の再構築を目的として、1947年(昭和22年)に日本において地方自治法が施行され、都道府県・市町村の首長と議会を、住民が直接選ぶ制度が本格的に始まりました。
この制度設計には、占領期のGHQの影響が強く、中央集権から地方分権へ、そして住民自治の確立が明確な目的とされており、制度導入に伴う一斉スタートの性格が強いものでした。
1950年代に入ると、首長の辞職や死亡に伴う選挙の実施、議会の解散、自治体合併の進行、さらには当時の政治情勢による任期途中での選挙などが重なり、地方選挙の日程は全国で次第にそろわなくなってきました。地方選挙は自治体ごとに異なる時期に行われるようになり、全国的な統一性は失われました。その結果、選挙管理事務が恒常的に発生し、行政側の負担が増大するとともに、有権者にとっても選挙が頻発することで関心が薄れやすくなりました。また、地方選挙と国政選挙が近接、あるいは重複するケースも増え、争点が混在することへの懸念が指摘されるようになりました。
こうした課題を受けて導入されたのが、臨時特例法による選挙期日の統一です。これは、通常は公職選挙法で定められている任期の規定を一時的に調整し、その回の選挙に限って期日をそろえる仕組みです。この方式は1960年代以降に定着し、現在の「4年に1度、4月に実施される統一地方選挙」という枠組みが形成されました。
重要なのは、統一地方選挙が恒久的な制度ではないという点です。毎回、その時々の状況を踏まえて臨時特例法が制定されており、制度としてはあくまで例外的な調整措置であることが前提となっています。
実施時期が4月とされた理由についても、主に実務上の判断によるものです。年度替わり後で予算執行と切り離しやすいこと、衆議院解散など国政選挙と重なりにくいこと、さらに気候が比較的安定していることなどが挙げられます。思想的な理由というより、行政運営上の合理性が重視された結果と整理できます。
27年間、米国施政下に置かれていた沖縄県では、全国の統一地方選挙とは異なり、臨時特例法は制定されていません。公職選挙法の規定の範囲内で選挙期日が設定されています。
沖縄県選挙管理委員会のサイトに掲載されている執行予定選挙一覧を見ると、8月末から9月初旬に告示予定の沖縄県知事選挙を筆頭に、首長選挙が17、県議会議員補欠選挙が2選挙区、市町村議員選挙が通常29と補欠2となっています。そのため、ダブル選挙やトリプル選挙となる自治体もいくつか出てきます。
沖縄版統一地方選挙の経緯を調べると、他の都道府県より1年早い1946年(昭和21年)9月に、アメリカ占領下の琉球諸島で一斉に市町村長・議会議員選挙が行われたことが起点となっています。以降、西暦の4の倍数年(ほぼ閏年)の2年後の秋に実施されてきましたが、市町村長の任期途中での辞職や死亡、議会の解散、市町村合併によって、いくつかの市町村でずれが生じています。
私も所属していた那覇市議会は、1957年(昭和32年)、瀬長亀次郎市長に対する不信任決議案を可決したことで解散し、以来、沖縄版統一地方選挙の年の前年7月に市議会議員選挙が実施されています。そのため、直近では昨年7月の改選となっています。
なお、沖縄県議会議員選挙については、直近では令和6年(2024年)6月に実施されており、令和8年の沖縄版統一地方選挙においては改選対象とはなりません。
こうした中で迎える令和8年の最大の焦点は、沖縄県知事選挙です。現職の玉城デニー知事が三選を果たすのか、それとも新たな選択が示されるのかは、今後の沖縄県政の方向性を大きく左右することになります。
私の考える争点を大きな流れで整理すると、まず引き続き普天間飛行場の辺野古移設問題が、現職の県政運営における中心的なテーマとして位置付けられます。長年にわたり続いてきたこの課題について、国との対立構造を維持するのか、あるいは別の関係性を模索するのかは、知事の政治姿勢そのものが問われる問題です。もっとも、工事がすでに進んでいる現状を踏まえると、私たちの側としては、普天間返還後の、いわゆる嘉手納以南の返還地活用をどのように描くのかが重要であると考えています。
その基地返還と一体で、沖縄振興のあり方も大きな争点となります。国の予算や制度をどのように活用し、政府とどの程度連携していくのか。対立か協調かという単純な二項対立ではなく、実効性のある振興策をどう構築するのかが問われています。
さらに、台湾と中国の関係が緊張をはらむ中で、沖縄県がどのような立場で双方と関わるのかという問題も避けて通れません。地理的条件から、沖縄は常に国際情勢の影響を受けやすく、経済、観光、交流、安全保障の観点をどう整理するのかが県政課題として浮上しています。
その延長線上に、日米安全保障体制や日米地位協定を巡る問題があります。米軍基地を抱える沖縄として、米国とどのような関係を築き、国に対してどのような役割を求めていくのかは、感情論ではなく、現実的な対応が求められる分野です。
令和8年の選挙は、個別の政策判断にとどまらず、沖縄が今後どの方向を選び、どのような立ち位置で国内外と向き合っていくのかを問う選挙になると整理できます。
ちなみに、昨年末、県経済界を中心とする知事選挙候補の選考委員会より、公募(自薦・他薦)が行われました。私も同僚議員から推挙をいただき、以下の6つのテーマについて、それぞれ400文字の小論文を求められ、提出しました。
① 県経済の成長戦略及び県民所得向上について
沖縄県経済の持続的成長と県民所得向上を実現するためには、観光を引き続き重要な基幹産業として位置付けつつ、観光依存に偏らない産業構造への転換が不可欠である。観光については量的拡大ではなく、自然環境や県民生活と調和した質的向上を図り、地域内での利益循環を高めることが重要である。その上で、航空・離島航路を支える整備・運用分野など、技能と知識に価値が付く高付加価値産業を育成し、設計や運用といった上流工程、人材、ノウハウを県内に定着させていく必要がある。製造や量産は県外・海外と連携しつつ、沖縄が付加価値の起点となる分業モデルを構築することで、地理的制約を強みに転換する。また、実証や運用の成果を教育・訓練用コンテンツとして体系化し、人材育成と結び付けることで、若者が技能を身に付け、県内で働き続けられる環境を整える。産業振興にあたっては、生活環境に配慮したゾーニングを徹底し、成長と暮らしの質の両立を図ることで、安定した所得向上につなげていく。
② 人口減少における離島・過疎地域振興について
人口減少が進む中で、離島・過疎地域振興は、従来の「人口維持」や「現状維持」を前提とした考え方から転換し、持続可能性を重視した再構築が求められる。沖縄の離島においては、医療・教育・移動といった基礎的機能を確保しつつ、地域特性に応じた役割分担を明確にし、すべてを島内で完結させようとしない柔軟な発想が重要である。特に移動費は、通院、進学、就労、物流など生活と事業継続の前提条件であり、島内外の移動費への大幅な支援を行うことで、人の往来が不利にならない環境を整える必要がある。また、資材費に加え、移動費や滞在費が上乗せされることで住宅建設が進まない現状を踏まえ、住居整備への支援を強化することが不可欠である。島内での暮らしを基本としながら、本島との連携を前提とした医療・介護・居住の選択肢を確保し、二地域居住や関係人口といった多様な関わり方を認めることで、人口規模に依存しない離島・過疎地域振興を進めていく。
③ 医療・介護・福祉分野における人材供給体制の確立について
沖縄県の医療・介護・福祉分野では、全国的な人材不足に加え、離島県であることによる地理的制約が重なり、人材確保が特に深刻な課題となっている。今後の高齢化を見据えると、単に人材数を確保するのではなく、育成、定着、配置を一体で捉えた持続可能な人材供給体制の構築が不可欠である。離島では、遠隔診療や服薬指導等を活用して日常医療を支えつつ、専門性が求められる医療や介護については沖縄本島との役割分担を明確にする。介護分野では、離島在住者を利用対象とする地域密着型施設を沖縄本島に飛地施設として整備し、家族の近くで安心して生活できる選択肢を確保することが重要である。あわせて、世代や分野を分断しない沖縄型ごちゃまぜ福祉を進め、多職種連携や現場実習を通じて、学びながら働き続けられる環境を整えることで、人材が循環し定着する体制を構築していく。
④ 県内農水産業の振興及び高付加価値化に向けたビジョンについて
沖縄県の農水産業は小規模分散型である一方、自然条件や歴史・文化に根差した独自性の高い資源を有している。今後は生産量の拡大を追うのではなく、生産、加工、流通、販売を一体で捉えた高付加価値化を進め、安定した所得確保につなげることが重要である。特に離島では、輸送費や保管コストが経営に大きな影響を与えるため、加工や品質保持技術による付加価値創出、小ロット・高品質対応など、島嶼条件に適した経営モデルが求められる。また、需要動向を踏まえた商品企画やブランド管理といった上流工程を県内に残し、人材育成と結び付けることで、価格競争に左右されにくい産業構造を構築する。観光、外食、域外市場との連携を強化し、地域資源が持続的に循環する仕組みを整えることで、農水産業を「守る産業」から「稼げる産業」へと転換していく。
⑤ 老朽化する各種インフラ・県土の強靱化について
沖縄県における県土の強靱化において、水道管の老朽化は県民生活と産業活動に直結する極めて重大な課題であり、漏水や断水リスクを踏まえ、計画的かつ早急な更新に取り組む必要がある。更新の遅れは将来的な修繕費や災害対応コストの増大につながるため、優先順位を明確にした集中的対策が求められる。あわせて、水道事業の持続性を確保するため広域化を進めるとともに、渇水に備えた海水淡水化施設の整備・更新を図ることが重要である。電力については、再生可能エネルギーの活用を進めつつ、昼夜や天候による発電量の変動を平準化するため、蓄電の重要性を明確に位置付け、特に離島における蓄電体制を強化する。さらに、航空・離島航路といった基幹インフラについても予防保全を徹底し、水・電力・交通を一体で支える持続可能な県土強靱化を進めていく。
⑥ 子どもの貧困対策について
沖縄県の子どもの貧困は、各種支援施策が講じられているにもかかわらず、依然として厳しい状況が続いており、構造的な課題として捉える必要がある。県の調査でも、困窮世帯の割合が高水準で推移し、食事、学習、体験機会などにおける生活実感の厳しさが示されている。こうした中、最も重要な対策は教育に対する徹底的な支援である。教育への投資は一見遠回りに見えるが、学力や進学機会を通じて将来の就労可能性を高め、貧困の連鎖を断ち切る最も確実で近道となる。あわせて、保護者世代の安定就労や若者の職業訓練・就労支援を強化し、家庭の所得基盤を支えることが不可欠である。学習、体験、移動に関する支援が、事業を経由するのではなく子ども本人に直接届く仕組みへと転換し、教育と就労を軸に実効性ある貧困対策を進めていく。
最終的には、私よりも行政経験や政治経験の豊富な候補の名前が挙がったこともあり、選考対象となることは辞退しましたが、今回の小論文をまとめたことで、私自身が感じている沖縄県の課題や問題、そして今後に向けた可能性について、頭の中を整理することができました。非常に良い経験であったと感じています。
